多自由度空電ハイブリッドアクチュエータ

近年,世界的な少子高齢化による労働人口の減少が問題となっており,人件費の高騰により人材確保が難しくなってきている背景から,作業者の隣で作業支援を行う協働ロボットの開発が盛んに行われています.特に,人では難しい高重量物の搬送や高精度の組立作業をロボットが担うことでの作業効率向上が期待されています.そのため,協働ロボットの駆動機構には,高出力かつ高精度な多自由度動作特性だけでなく,人と予期せぬ接触時の安全性確保のための柔軟性が求められます.

しかし,多数のモータを直列に組み合わせて構成される既存の多自由度駆動機構は,各モータの制御誤差と機械要素の機械的誤差が累積し,精度低下を招きます.また,サーボモータを用いた多自由度機構は減速機を有するため高トルク生成が可能ですが,接触剛性が高く,柔軟性に欠けます.空圧シリンダは高出力かつ空気の粘弾性による柔軟性が得られますが,圧縮性に起因した応答遅れと摩擦が課題となり,高精度動作は困難です.


そこで,1台で多自由度動作を生成可能な多自由度電磁アクチュエータに注目しました.多自由度電磁アクチュエータは,動力変換・伝達機構なくダイレクトドライブで多自由度回転可能のため,高応答性を有するとともに高精度の動作が可能です.また,未知の外乱が与えられた際にバックドライブが可能であるとともに,系のもつ柔軟性を制御により調整可能です.これまで,簡素な構造・制御装置で駆動可能な多自由度電磁アクチュエータを提案してきましたが,減速機を用いることができないため高出力化に課題が残る状況でした.


この問題を解決するため,重量当たりの出力密度の高い空気圧力と電磁力によりハイブリッド駆動する新しい多自由度アクチュエータを提案しています.電磁力駆動では俊敏かつ精確な動作生成が可能であり,空気圧力駆動では大出力化が期待できます.そのため,空電ハイブリッド駆動は両者の利点を共有しながら互いの欠点を補うことができます.また,両駆動源ともに外力に対してバックドライブが可能な駆動方式であるため,予期せぬ接触時の安全なインタラクションも同時に満足できます.

DD2023-部矢.pdf